【2006年8月11日】
コンピュータを使ったスピーカーの測定と設計(第二回)
T/Sパラメータによる低域特性の予測
■ T/Sパラメータを使って容積を決める
T/Sパラメータとは、このパラメータを利用する事でスピーカーユニットと箱(密閉型もしくはバスレフ型)の低域特性を計算で予測する事が出来ると言う便利なパラメータです。
こう言った、パラメータが無い時は経験則でしか容積を決める事が出来なかった物を比較的簡単な計算で容積を決める事が出来る様になり非常に便利になりました。
(日本では似たような考えの元に作られたJISのパラメータと言うのがありましたが、現在はJISでもT/Sパラメータを基準とした規格を正式に採用しています)
このパラメータはネビルティール(Neville Thiele)とリチャードスモール(Richard Small)と言う二人よって考案され二人の名前から、このパラメータはT/Sパラメータと呼ばれるようになりました。
スピーカーユニットと言うのは機械的な要素を多く含んだ物ですが、T/Sパラメータは電気的な特性からパラメータを算出する事が出来ると言う特徴を持っています。
(正確には、詳細なパラメータの一部は完成したユニットから計る事ができないパラメータもありますが、箱の容積を計算するのに必要なパラメータはインピーダンスの測定から計る事が出来ます)
この為に機械的な要素が分からないスピーカーユニットに関しても電気的な特性からT/Sパラメータを得る事が出来ます。
現在、このT/Sパラメータが世界的にスピーカーユニットに関する標準的なパラメータになっている為に各ユニット製造メーカーは、このパラメータをユニットのデータに掲載している事が多いです。
そして、現在ではコンピュータ上でこのパラメータを使い低域特性を予想する事が出来るソフトを使う事によって箱のサイズと低域特性の関係を比較的簡単に調べる事が出来ます。
今回は、T/Sパラメータはメーカー公開の値を利用しますが、上にも書いた様にT/Sパラメータは自分で計ることも出来ます。
この、T/Sパラメータを計るには容積の分かっている箱にスピーカーユニットを取り付けてインピーダンスカーブを測定する必要がありますが、この方法を使うとスピーカーユニットを計測する為の箱を作らないといけません。
そこで、簡易的にはスピーカーのコーン上に箱の替わりになる負荷として重さの分かっている錘を乗せてインピーダンスカーブを計測する事によっても計る事が可能です。
(この方法を使った場合でも通常は十分な精度でT/Sパラメータを計る事が出来ます)
この計測も、praxisなどの計測システムを利用する事で計測が出来ます。
右上の画像の左側の画像は、WinISDを利用して低域の特性をシミュレーションした物で、右側の画像はT/Sパラメータの入力画面です。
WinISDには、標準で沢山のスピーカーユニットのT/Sパラメータのデータが入っていますが自分で新しくパラメータを入力する事も出来ます。
■ WinISDの利用方法
WinISDはフリーソフトなので、デンマークのLINEARTEAMのホームページからダウンロード出来ます。
LENEARTEAM(http://www.linearteam.dk/)
ソフトのインストールが終わったら、WinISDを起動します。
WinISDを起動すると、上の段の左の様な画面になると思います。
この画面で、上のメニューにあるNewを押します。
Newを押すと、上の段の右の画面の様な画面が表示されます。
この画面は、シミュレーションに利用するスピーカーユニットを選択する画面です。
WinISDは標準で様々なスピーカーユニットのT/Sパラメータに関するデータを持っています。
標準で、データを持って居ないスピーカーユニットに関してはDriver nameの右側にあるNEWのボタンを押す事でパラメータを入力する事が出来ます。
NEWボタンを押すと下の段の左側の画面が表示され、この画面でパラメータを入力します。
追加されたデータは下の段の右の画像の様にOwn driversの所に表示されるようになります。
ちなみに、日本ではスピーカーでドライバーと言うとコンプレッションドライバーの事を指す様に思われますが英語では、普通のスピーカーユニットもドライバー(Driver)と言います。
この、WinISDはコーン型でエンクロジュアが必要なスピーカーユニットには全般使う事が出来ますので、例えばフルレンジスピーカーの容積を計算する場合にも利用できます。
■ WinISDを使ってエンクロジュア容積を実際に計算する
実際にスピーカーユニットのシミュレーションをしてみます。
今回はWinISDのデータにあるETON 5-880/25-Hexをシミュレーションしてみます。
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| 1.スピーカーユニット選択 |
2.ユニット個数選択 |
3.エンクロジュアタイプ選択 |
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| 4.低域特性表示 |
5.容積を7Lに変更 |
まず、シミュレーションするスピーカーユニットを選びます(画面では上の段の一番左)。
次にDriverの数と配置方法を選ぶ画面ですが、数は1個でPlacementはNomalを選びます(画面では上の段の中央の画面)。
次に、エンクロジュアのタイプを選びます(画面では上の段の一番右の画面)。
通常、日本ではバスレフ型と呼ばれている物がVentedと言うタイプになります。
今回はバスレフ型のスピーカーを作ろうと思うので、ここはVentedを選択します。
ここまでの操作で、低域の特性予測画面が表示されます(下の段の一番左の画面)。
エンクロジュアの容積を変えた特性や別のスピーカーユニットの特性なども線の色を変えて同じ画面に表示させる事が出来ます。
非常に簡単な操作でこのソフトは使う事が出来ますので試してみるのには面白いと思います。
さて、こんな感じでETON 5-880/25-HexはT/Sパラメータによるシミュレーションによると7リットルのエンクロジュアで利用するのは問題無さそうです(画面下の段の右側)。
■ 今回使用するスピーカーユニットに関して
上で解説したようにWinISDを利用すれば様々なスピーカーユニットで容積のシミュレーションが出来ます。
今回は、作るスピーカーの予算の都合上手元にあるRIT CUSTOM RE-CP14にしたいと思います。
元々大体、7リットルクラスのエンクロジュアで利用出来る様に作られているユニットですが、一応シミュレーションをしてみます。
左の画面の様に上で解説したように新規のDriver(スピーカーユニット)のパラメータを追加します。
そして、7リットルでシミュレーションした結果(右の画面)。
問題無さそうです。
■ T/Sパラメータによる低域予測
今回は、例として2WAYバスレフスピーカーのシミュレーションを行いましたが、WinISDはフルレンジを含め様々なスピーカーのシミュレーションに使う事が出来ます。
密閉やバスレフのスピーカーの容積は、大き過ぎても小さ過ぎても低音は出にくくなります。
こう言ったシミュレーターにより最適なエンクロジュアの容積を知って箱を作る事でユニットの性能を引き出す良い箱が作れると思います。
次回は、実際のスピーカーの測定に関して解説したいと思います。
□WinISD
http://www.linearteam.dk/
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