【2006年8月8日】
コンピュータを使った2WAYスピーカーの計測と設計(第一回)
高性能コンピュータが家庭に普及している現代のスピーカー計測と設計
■ スピーカー設計がコンピュータによりどう変るのか
現在、スピーカー以外でも設計の各分野にコンピュータは導入され普及していますが無論スピーカーにも、このコンピュータによる設計環境は普及して来ています。
そして、特に最近のコンピューターの高性能化と低価格化に合わせてスピーカー用の設計、測定環境も以前に比べて低価格に構築できるようになりました。
メーカー向けの製品は以前からありましたが、現在のこの様なスピーカー計測システム等は十分個人でも導入できる価格です。
日本でも徐々にコンピュータによる計測システム等を導入した人も多くなって来ていると思います。
これらのシステムは、個人でもメーカーと互角の環境でスピーカーを設計したり測定する事が出来る事が出来るようになると言う非常に画期的なシステムではありますが、使いこなすにはコンピュータの操作にある程度慣れていて更にスピーカーに関する知識等も必要になる為、スピーカーに関しての解説書なども少ない日本の現在の環境では、なかなか使いこなせないと言う方も多いようです。
僕もスピーカー測定システムや設計ソフトウェアの販売に関わっていますが、「測定の仕方が分からない」とか「測定したデータの意味が分からない」、「スピーカーの設計に測定システムを利用したいがどの様にしたら分からない」等と言った声を良く聞きます。
これらの中には、実はスピーカー設計環境の事ではなく、スピーカーシステムの事に関して知られていない事が多くその為に、測定システム、設計環境を使いこなす事が出来ないと言う事も実は多いのです。
これらの質問に対して、個々に対応出来るのかと言うと難しい状況ですし、そもそもスピーカーの構造に関して始めから説明すると言うのは、スピーカー測定システムのサポートの範疇を超えています。
しかし、では逆にコンピュータによるスピーカーシステムの設計に役立つような良い日本語の解説書があるのかと言うと?現状では余り僕の知る限りありません。
そこで、このシリーズではスピーカーに関する内容を交えながら、コンピュータによる設計システムとその利用方法について解説する事で、スピーカーシステムに関わる事に関しても、この様なスピーカー設計システムを使う事に必要と思われる知識から、少し関係のある事までなるべく難しくならないように解説したいと思います。
■ コンピュータ設計システムを利用する設計
コンピュータによるスピーカー設計環境を利用してスピーカーを設計すると言いますが、他の設計の分野と同様に基本的にはコンピュータの計算力を利用して複雑な計算をコンピュータの力を借りて自分で計算するよりも遥かに楽に計算が出来るようになると言う物です。
つまり、基本的にはコンピュータを利用していると言っても主体になるのは設計している人な訳でコンピュータが人に変って設計してくれる訳ではありません。
僕(やぐ)は何をバカな事を言ってるんだ当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、不思議な事にコンピュータ設計をしていると音が良くないとか、耳で聞いて音を決めた方が音が良いからコンピュータ設計は良くないと言うような事を書いていたり、言っていたりする人を良く見掛けます。
コンピュータはあくまでも設計を支援するツールであり、設計の方針や構造を決める主体は人間です。
なので、コンピュータが勝手に作ったりする物ではありませんし(一部自動設計機能等はソフトにありますが)どの様な設計にするかは設計する人に委ねられています。
むしろ、コンピュータによる計算力を得た事で手動で計算するよりもより複雑な計算を短時間で行う事が出来るようになりますので、設計者の設計に対する自由度はより高くなっていると思います。
■ コンピュータを使って2WAYスピーカーを設計する
さて、大分前置きが長くなってしまいましたが、ここから具体的なスピーカー作りを始めたいと思います。
今回は、2WAYスピーカーを設計しますが、何故2WAYスピーカーの設計をする事にしたのかと言うと、スピーカーの設計シミュレータを利用した場合、設計シミュレータで設計が便利になる2つの要素にエンクロジュア(スピーカーユニットが収納されている箱)の容積に関する計算とクロスオーバーの設計があります。
一般的にも、この2つがスピーカーの設計シミュレータで一番多く使われる機能だと思います。
この2つの要素が設計で必要で一番、簡単なスピーカーが2WAYスピーカーだったので、今回は2WAYスピーカーの設計をする事にしました。
■ 今回利用するスピーカーの測定と設計ソフトに関して
(praxis)総合的なコンピュータ音響測定システム
今回は、スピーカーユニットの測定に利用
(WinISD)フリーソフトの低域特性シミュレーションソフト
T/Sパラメータにより低域の特性をシミュレーションするソフトで今回は容積の計算等に利用します。
(SpeakerWorkshop)スピーカーの設計と計測の総合環境フリーソフト
何と、スピーカーユニットの計測からネットワークの設計まで可能な高性能フリーソフト。
今回は、ネットワークのシミュレーション用に利用します。
実は、スピーカーユニットの測定からネットワークの設計までSpeakerWorkshopのみで全てが可能です。
しかし、SpeakerWorkshopで測定から行う場合は測定用のマイクとマイク用アンプが必要になるので、例えば安い物で揃えたとしても数万円掛かります。
(測定用マイクやマイクプリアンプも含めて全部自作すると言う手もありますが、これなら場合によっては1000円程度で全ての環境を構築できます、そう言う意味でもSpeakerWorkshopは非常に素晴らしいソフトです)
また、測定用に利用できるコンピュータ側の環境も自前で作らないといけません。
そこで、今回は測定は測定用のパッケージになっているpraxisを利用する事にします。
今後、他の解説のページでもpraxisによる測定を行おうと思いますので、第一回と言う事でpraxisの測定も盛り込む事にしました。
WinISDで行う低域特性のシミュレーションに関してもSpeakerWorkshopで可能ですが、WinISDはT/Sパラメータから容積を計算するソフトとして非常に便利にそして楽に使えるようになっています。
と言う訳で、フルレンジスピーカー等で利用する方にも簡単に使えますので、今回はWinISDの解説も兼ねて容積の計算にはWinISDを利用する事にしました。
■ スピーカー設計製作の流れ
スピーカーに使うスピーカーユニットを決める
(2WAYの場合ウーファーとツィーターのクロスオーバーを組む事が出来るような周波数特性であるかを確認する必要があります、通常2WAYの場合ウーファーのサイズは最大で18cm程度が限界)
↓
利用するウーファーユニットに合わせて箱の容積を決める
(T/Sパラメータから、スピーカーの低域シミュレーションを行って容積を決める)
↓
箱を製作する
↓
箱にユニットを取り付けユニットの測定(位相とSPLグラフ、インピーダンスカーブ)をする
↓
スピーカーネットワークシミュレーターを使いネットワークの設計を行う
↓
実際にネットワークを組み込みスピーカーを組み立てる
↓
スピーカー完成!
と言う手順になります。
今回は箱は自作で作らずに、ユニットのデータから合いそうなサイズの六本木工学のエンクロジュアキットを利用する事にします。
それでは、第二回から実際に設計を始めて行きたいと思います。
□praxis
http://www.libinst.com/
http://www.ritlab.jp/
□Speaker Workshop
http://www.audua.com/
□WinISD
http://www.linearteam.dk/
戻る